2018/07/27 (Fri) 12:23
武満徹生誕88年記念コンサート開催のご報告

6月16日(土)に、武満徹生誕88年記念コンサートをガラスのピラミッドのアトリウムで開催しました。数日前から6月にしては珍しい寒さとなり、お客様にカイロを用意しなくては・・・とドキドキしていたのですが、土曜日は良い陽射しに恵まれ、暖かいアトリウムに多くのお客様をお招きすることができました。
演奏家には、MFCではお馴染みとなったフルートの小泉浩さん、ピアノの柴田千賀子さんの素晴らしいお二人、さらに小泉さんと旧知の山崎衆さん(元札響のフルート奏者)を客演にお迎えしています。
 
ピアノソロで6曲、フルートソロ等で4曲と、演奏曲の全てを武満の作品とする演奏会は全国にもそうはないでしょう。また、武満の初期から遺作まで、幅広く武満の世界を俯瞰できる曲目構成です。お客様は、このコンサートのために仙台や東京、遠くは滋賀県からもいらしていました。
 

 

会場に大きな「AKARI」を4つ並べ、まだ外は明るい18時に「雨の樹素描」でコンサートはスタートしました。大江健三郎の小説に発想を得たピアノ曲ですが、柴田さんの演奏が始まると、会場は一気に武満の世界に。この曲もそうですが、武満の作品は想像力を喚起させる詩的なタイトルが多いですね。
2曲目に小泉さんが登場し「ヴォイス」を。瀧口修造の詩の断片(声)と演奏を合わせる実験精神旺盛な作品で、小泉さんの演奏の真骨頂でもあります。以降、お二人は交互にソロを弾き合うかたちでコンサートは進行します。「2本のフルートのためのマスク」では、山崎さんが客演し、この曲だけ小泉さんとの2重奏です。マスクとは仮面劇のことですが、この仮面は能面でしょうか。
 

 
当夜のピアノ曲の白眉となった「閉じた眼Ⅱ」が終わり、最後の演奏は武満の遺作となったフルートソロの「エア」。
「エア(air)」とは歌(アリア aria)のこと、と小泉さんは説明します。
歌いたい、もっと歌いたい、と死の直前まで音楽創造に向き合った武満の気持ちが込められているそうです。
外はすっかり日が暮れて、「AKARI」の柔らかい光がアトリウムにぼうっと伸びています。
音(歌)と空間が渾然一体となった9分間の演奏で、コンサートは幕を閉じました。
 

 
 

(T.T)